サヤカ


「機械獣クロコダイバー01 ビューナスともども弓さやかを捕えるのだ!」
さやかは成す術もなくあしゅら男爵に捕われてしまった。


「いい格好だな、弓さやか フフフ…」

移動要塞に収容されたさやかは水着のまま
様々な医療器具や怪しげな機械が並ぶ部屋の椅子に拘束されていた。

「あしゅら男爵 わたしをどうするつもり!」
「弓さやか、お前には私の命令に従ってもらう」
「ふん、誰がお前たちの命令なんか聞くものですか!」
「フフフ… まもなく、兜甲児がお前を助けにここに来る。 まずは兜甲児を抹殺させてやろう」
「バカじゃないの、私が甲児くんを殺すわけないじゃ…」

あしゅら男爵の助手をしている鉄仮面が手にしているモノが眼に入ったさやかの顔が強張る。

「まさか、それで私を… や、やめて…」

鉄仮面を外していた助手の頭に装着されている金属製のヘッドバンド。
助手はそれと同じモノをさやかの頭上にある装置にセットした。

「これが何か理解できたようだな 弓さやか」

鉄仮面にされた者たちは脳改造を施された後、このヘッドバンドと鉄仮面を被らされて
Dr.ヘルに絶対忠実な兵士として働かされている。

「お前を完全にDr.ヘル様の忠実な兵士する時間がない。
  だから、この洗脳装置を使ってお前を一時的に鉄仮面にする。
   兜甲児の始末が終われば、Dr.ヘル様に忠誠を誓う女戦士に改造してやろう」
「い、いや… いやよ お前たちの言いなりになるなんていやよ!」

無理なことは解っているが手足を動かして拘束から逃れようとするさやか。

「フフフ… ムダだムダだ。
  いま、ワナとも知らずに兜甲児がお前を探し回っている」

話をしながら壁のコントロールパネルの前に移動したあしゅら男爵が
装置の作動スイッチを入れると部屋の明かりが暗くなり、さやかの頭に
怪しげな装置が被さり、さやかを鉄仮面にするためのヘッドバンドが装着された。

「い、いや、いや、やめて、やめてぇぇ!!  ヒィッ… ギッ… ギャアァァァァァァァァァァ」


しばらくすると、さやかの苦痛の悲鳴がおさまり
カクリと首が前に折れるとあしゅら男爵は狂喜の笑みを浮かべながら
さやかに近づき、手足の拘束と頭に被さった装置を自らの手で外していた。

「フフフ… 起きろ、起きるんだ 弓さやか」

あしゅらの命令にさやかの指先がピクリと動き、ゆっくりと頭を上げる。
その額には金属製のヘッドバンドが鈍く輝いていた。

「弓さやか わたしの命令に従えるか」
「はい あしゅら男爵様 何なりとご命令を」

さやかの支配が完了したことを確認したあしゅらがさやかに命令を与える。

「弓さやか 戦闘服に着替えてわたしに着いて来るのだ」
「はい、承知いたしました。 あしゅら男爵様」

あしゅらの前で裸になったさやかは鉄仮面が着けているモノと同じ戦闘服に着替えを済ませて
鉄仮面を小脇に抱えるように持つと部屋を出るあしゅらの後について行った。



「あの部屋にだけ見張りが立っている。 さやかさんはあの中に居るに違いない」

あしゅら男爵からさやかの命と引き換えにマジンカイザーの引き渡しを要求された兜甲児は
その要求を受け入れ、囚われの身となった。 だが、一緒に潜入してきたボスに助けられ
二人でさやかを救出するため行動していた。

「フフフ… ようやく辿り着いたか兜甲児。 この部屋がお前の墓場になるとも知らずに」

あしゅらは部屋の壁にあるモニターで扉の前で鉄仮面を倒して
部屋に飛び込むタイミングを窺っている兜甲児を喜びに満ち溢れた顔で見つめていた。

「あしゅら!! さやかさんは返してもらうぜ!!」

甲児とボスは勢いよく部屋に飛び込み部屋の中を見渡す。
真正面にあしゅら、その両脇には数人の鉄仮面が剣や機関銃を構えている。
そして、あしゅらの隣に立っているさやかに眼が止まり、甲児の顔は戸惑いを隠せずにいた。

「さ、さやかさん、何でそんな格好をしてるんだ!!」

甲児は立ち止ったまま、どこか様子のおかしい
感情のない冷たい眼で自分を睨むように見ているさやかに声をかけることしか出来ない。
呼びかけにも答えようとせず、ただ見つめるだけのさやかに甲児は怒りの眼をあしゅらに向けた。

「やい、あしゅら!! さやかさんに何しやがった!!」
「フフフ… ご覧の通り
  弓さやかは鉄仮面としてDr.ヘル様の世界征服の尖兵として働くことになったのよ」
「何言ってやがる!!
  さやかさんがお前達の仲間になるわけねぇーだろう!! さやかさん何とか言ってくれ」
「フフフ… ムダだ、兜甲児。
  弓さやか Dr.ヘル様のシモベとなった証を見せよ。 兜甲児を抹殺するのだ!!」
「はい、承知いたしました。 あしゅら男爵様」

冷たく微笑み、抱えていた鉄仮面を被ると隣りの鉄仮面から機関銃を受け取り甲児に向けて乱射し始めた。

「や、やめるんだ さやかさん。 目を覚ましてくれ!」

さやかは機関銃を乱射しながらじわじわと甲児を部屋の隅に追い詰めると
両腕と両足を撃ち抜き甲児の動きを封じた。
床の上を転げ回る甲児を二人の鉄仮面が部屋の中央、あしゅらとさやかの前に引きずり出すと
口元に笑みを浮かべたさやかが腰の剣を抜き、その切っ先を甲児の胸、心臓の位置にあてがった。

「さ、さやか…さん… やめるんだ…」

床の血溜りの中で力無く訴える甲児。
だが、さやかは表情を変えず剣に力を加えて剣を甲児の胸に突き立てる。

― ゴフッ… ―

「さやか…」

血を吐きながらさやかを見上げる甲児の瞳は大きく見開かれ、その目蓋が閉じられることは二度となかった。



Dr.ヘルの前にあしゅらとさやかが跪いている。
あしゅらの手で洗脳改造手術を施されたさやかの額にヘッドバンドはなく
さやか用に用意された漆黒の戦闘服を身に着けていた。

「時は来た。 あしゅらよ、人間どもを我が前に跪かせるのだ!!」
「ハハァァ Dr.ヘル様、これより我が娘サヤカに機械獣軍団を率いさせ、光子力研究所の攻撃に向かわせます」
「グフフフ… サヤカよ、パワーアップしたマジンカイザー ヘル・カイザーをお前に授ける」

邪悪に微笑んだサヤカがDr.ヘルに小さく頭を下げ

「ありがとうございます Dr.ヘル様。
  これより光子力研究所に向かい最後のマジンガー、グレートの首を…」



数時間後
倒壊した光子力研究所を取り囲む機械獣軍団を指揮するヘル・カイザーの足元に
首を落とされたグレートマジンガーが横たわっていた。

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