エデン 10

「いたい… あっし…生きてる…」

真っ白な天井をじっと見つめVV鵜飼奈々がぼそりと呟いた。

「ホント あの状況でこの程度の怪我で済むなんて、奇跡としか言えないわね」
「えっ… 菊池…隊長? がどうして…っすか」

衛生服とマスクを着けたガイアフォース隊長菊池亜沙美が奈々の顔を覗き込んだ。

「脳、内臓へのダメージは無かったけど、キミは2週間眠り続けていたのよ」
「2週間…」
「で、キミはあそこで何をしていたのかな?」
「あそこ…」
「湾岸エリア12区画 建設途中のマンションが倒壊し
  そのマンションの瓦礫の中からキミは発見された」

「建設途中…マンション……… アァッ!! ウガッ…イッツツゥゥ…」
「ムリよ 無事だったとは言え、肋骨、腕、足が見事に折れているのよ。
  で、あそこで何をしていたの」
「友華は、沙耶ッチは!!」
「友華? VU山崎隊員のことね
  そのこともキミに確認しないといけないんだけど…沙耶ッチって?」
「沙耶ッチ、瀬戸沙耶香っす」
「沙耶香? ウチの沙耶香なら二日前に復帰して任務に就いているけど…どうかした?」
「エッ!? 二日前に復帰? 沙耶ッチ、沙耶ッチは無事だったんっすか?」
「? キミの言ってることがよく判らないんだけど… 最初からゆっくり話しましょう」


ロイヤルフォースメディカルセンター。
爆発に巻き込まれた奈々は奇跡の生還を遂げ、ここに運び込まれていた。

「なるほど、雪谷隊長とVIがエデンの手に堕ち、操られていると言うのね。
  そして、VU山崎隊員を拉致されて一緒にウチの沙耶香もキミの代わりに拉致されたと」
「そうっす 友華と沙耶ッチも、もうあのイヴってエデンに操られているかもしれないっす」
「確かにキミの話に矛盾しているところはない、これまでの問題全てが一つに繋がり説明がつくわ」
「沙耶ッチにおかしなところないっすか
  おでこにヘンなマークがあるとか、ヘンな化粧してるとか」
「クスッ… なにそれ」
「美和子にはあったっす ヘンな化粧して、おでこにヘンなマークが」
「あったら復帰させてないでしょうね。 キミの話を信じていない訳じゃない。
  沙耶香は2週間前に急病で入院したわよ。 けど
   毎日のように私や他のメンバーがお見舞いに行ったり、連絡をとったりしていたのよ」
「沙耶ッチはあっしが無事だってことを」
「知らないわ。 キミが生きていることを知っているのは
  ゼウスフォースのメンバーと藤堂司令、そして私とここの限られたスタッフだけよ」
「でも、でもですけど、菊池…隊長…」
「亜佐美でいいわよ」
「うっす 亜佐美…さん 沙耶ッチを疑いたくないっすけど
  これ以上仲間がエデンの好きにされるのはもっと嫌っす。
   イヴは自分を傷つけたあっしを殺したつもりでいるっす。
    だから、沙耶ッチにあっしが生きていることを教えれば…
     沙耶ッチがイヴに操られていれば、きっとあっしを狙ってくるっす」
「奈々!! バカなこと言わないの そんなこと出来るわけ無いでしょう。
  キミに聞いた話を藤堂司令に報告し、指示を仰ぎます」
「亜佐美さん…」
「奈々 隊員の安否が確認できないビーナスフォースは一時的に解体されて
  昨日付けでキミを私の隊で預かることになったの」
「エッ、エェェ! あっしがガイアにっすか」
「なに? 私の隊じゃ嫌だっての?」

亜佐美が顔を引き攣らせ、ベッドの上の奈々を見下ろす。

「い、いえ、そ、そんなこと、ないっす…」
「なら、このまま超高度治療を受ければあと一週間で動けるようになるそうだから
  いまはムリをしないで…  一週間後、隊に合流するように!!」
「ヒッ!! りょ、了解っす…」


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