- 堕転 -



「グルルル… アビゴールサマ シロイキシタチガ ヒロマニタドリツキマシタ」

翼を持つ狼の姿をした魔物マルコシアスが
鈍く輝く漆黒の鎧を纏い部屋の中央で腕を組み仁王立ちしている
この城のあるじ魔大公アビゴールに侵入者の進攻状況を告げる。

「ホワイトナイツ 忌々しい奴らめ」

そうもらしながらも余裕の笑みを浮かべ
脇に控える魔術師ファウストに視線を向けた。

「ファウスト 抜かりはないな」
「本当に宜しいのですか? 後顧の憂いは断っておいたほうが良いのでは…」

魔術師ファウストが進言の言葉を口にした。

「何度も同じ事を言わせるな!!」
「ハハァッ 仰せのままに」

その言葉と共にファウストの気配が消える。



ホワイトナイツ
黄金に輝く両刃の剣を振るう剣士クサナギ
刀身に十字架の彫刻が施された銀の剣を振るう女剣士マヤ
古びた特徴のない槍を薙ぐ槍兵カシウス
小柄な体とは不釣合いな大弓を弾く女弓兵アルジュナ
彼らは聖なる力が宿る聖剣と聖剣の力で具現化された
白銀の鎧を纏い巨大な魔力と戦っている。



魔大公アビゴールが築いた魔城。
その広間に突入したホワイトナイツは切り伏せても後から後から湧いてくる
魔物たちに行く手を阻まれ、広間の中央で四方を魔物に囲まれていた。
互いをフォローできるようにフォーメーションを組み、この広間まで辿り着いたのだが
バラバラだった魔物たちの攻撃が統率のとれた軍団へと変化すると
ホワイトナイツの連携を乱し、彼らのフォーメーションをも崩し始めていた。

「クサナギ マヤが」
「わかってる!」

― 気のせいか… 僕たちをここに足止めして
   マヤだけを奥の部屋に誘い込もうとしているみたいだ ―

周囲の魔物を薙ぎ払いながらカシウスは魔物の動きに不審を抱く。

「アルジュナ マヤの援護をお願いします」
「オッケー! マヤ、避けてね≪シューティング・スター≫」

カシウスの指示でマヤの援護にまわったアルジュナが天井に向かい矢を放つ。
矢は天井に当たる寸前で爆ぜ、無数の光の矢となってマヤを囲む魔物たちを射抜いた。
「ありがとうアルジュナさん  イィヤァァー」

アルジュナに礼を言うと愛剣を地面と水平に滑らせて
マヤは仲間の屍を乗り越えて襲ってくる魔物を切り払う。

― 銀の剣を持つ騎士よ、そのまま我があるじのもとに… ―

姿と気配を消して魔物を操るファウストがマヤを奥の部屋へと続く扉に誘う。

「クサナギ、魔族は僕たちをバラバラにして1人づつ
  倒すつもりなのかも…  だとしたらマヤが危ない!」
「チッ!! アルジュナ、マヤを追ってくれ!!」
「ちょっと、簡単に言わないでよね!! 肩借りるわよ」

大柄なクサナギの肩を踏み台にしてアルジュナは天井のシャンデリアに
飛びつくと窓から隣の部屋に向かった。

― おやおや 余計なネズミが一匹… フッフッ… ―

ニヤリと口元を歪めたファウストがアルジュナのあとを追うように姿を消した。




「今日で終わりよ アビゴール!!」

部屋に飛び込んだマヤが余裕の笑みを浮かべ立っているアビゴールに斬りかかる。

「フッ… 小娘が猪口才な。 だが…フフッ」
「何がおかしい!!」

マヤの剣を難なく受け止めたアビゴールの視線がマヤの全身に絡みつく。

「どうだ白銀の騎士、私に従う気はないか」

アビゴールはマヤに魔族に降るよう誘いながら
攻撃を受け交わすだけで戦う意志を見せない。

「戯言を!!」
「私は本気だ
  それにこの程度の力では私には勝てぬ 大人しく私に従え」

打ち合った剣が鈍い音をたてて止まり
マヤとアビゴールが睨み合っていると
耳をつんざく轟音と振動で足元が大きく揺れた。

「な、なに!?」

小さくバックステップを踏み、アビゴールから離れたマヤが
入ってきた扉の方を見やると怪しい影が揺らめいていた。

「アビゴール様 まもなくです。 お急ぎ下さい」
「お前はファウスト! いったい何をしたの!!」
「フフッ…ワハハハ…
  この城がホワイトナイツの墓場となるのだ」

剣を鞘に収めたアビゴールの背後の空間が歪み体が黒い霧に包まれる。

「アビゴール! 逃がしはしない!!」

走り出したマヤはアビゴールの胸の位置に切っ先を合わせて
体当たりすると愛剣をアビゴールの胸に突き立てた。

― 捕まえた!! このまま…エッ!? ―

アビゴールを両断しようとマヤは胸に突き立てた剣に力を加えた。
だが剣はアビゴールの胸に刺さったまま微動だにしない。

「フフフ…ワハハハ…」

いきなり笑い出したアビゴールの顔をマヤはゆっくりと見上げた。

「な、なぜ…」

状況が把握できないマヤはピクリとも動かない剣を
なんとか引き抜こうとしていた。

「フフフ… この剣の真の所有者はこの私だ」
「エッ!? アビゴール、いま…」

アビゴールは驚きを隠せないマヤをあざ笑い

「ククク… 先の決戦で奪われし我が剣、魔剣エクスカリバー返して貰うぞ」

アビゴールの言葉が終わると
剣はゆっくりとアビゴールの胸の中へと飲み込まれてゆく。

「そんなバカな!! この聖剣が魔剣? 魔剣エクスカリバーですって!!」
「そうだ 魔力を封じられ、このような醜い姿になっているがな」

刃は全て飲み込まれ、マヤが握りしめている柄を残すだけとなった。

「ハッ!」

危険を感じたマヤは柄を離すと素早く飛び退こうとしたが
突然目の前が霞み、全身の力が抜けたマヤはガクッリと膝を落とし
アビゴールの前に跪いた。

「ち、力が抜ける…どうして…」

アビゴールの顔を見上げることも出来ず、視界に黒い霞がかかってゆく。

「気に入って貰えたかな? エクスカリバーを通して流れ込む我が魔力」

不敵な笑みを浮かべてアビゴールがマヤを見下ろす。

「…くっ…あ…あ……アビ…ゴ…ル…」

アビゴールの魔力がマヤの意識と体力を奪う。

「ククク… 白銀の騎士殿、我が居城へ招待しよう」

足元で意識を失い崩れ落ちているマヤを抱き上げると
空間の歪みに溶け込んで消えた。




聖剣を奪われ、その加護の力を失ったマヤは
白のレザースーツとチェーンメイル姿で
床に画かれた六芒の魔法陣の中央に寝かされていた。

対魔力効果のあるレザースーツが
魔力を浄化して、マヤに正気を保たせている。

「囚われの身となった感想を
  是非、聞かせてもらいたものだな。 白銀の騎士」

アビゴールの質問に答えず
怒りに満ちた眼差しを自分を見下ろし嘲笑っている魔人に向けた。

「『早く殺せ』とでも言いたそうだな。
  自ら命を絶って頂いても構わんが… ククッ…これは失礼
   神の加護を受けている者が自ら命を絶つということは
    魔族にその身を堕とすことよりも大罪だったか… クククク…
     まぁ、死ねば醜いアンデッドとして蘇らせるだけだがな クックックッ…」

マヤは何も出来ない悔しさに
奥歯を噛みしめ怒りで全身を震わせることしかできない。

「ならばさっさとアンデッドにでもすればどうなの!!」
「フフッ… お前をアンデッドや下級モンスターなどにするつもりはない」

そう話すアビゴールは邪悪な笑みを浮かべていた。

「それはどう言う意味…
  何を企んでいるのアビゴール、私をどうするつもりなの」

魔族に捕らえられてアンデッドやモンスターにされた
仲間たちの姿を見てきたマヤは、自分も同じように
魔物にされるのだと思っていた。
しかしアビゴールの言葉にどう言う意味があるのか
彼が何を企んでいるのか予測できない恐怖に
マヤの顔は自然と強張り、言葉も微かに震えていた。

「クックック…」

笑いながら魔術師ファウストを見やると小さく頷き合図を送った。

「かしこまりました アビゴール様
  それでは術を施させてもらいますよ 白銀の騎士殿」
「術? なにをするつもり…やめなさい……やめて…」
「怖いのか? クックック… 白銀の騎士と言えども怖いか」
「恐怖など… 私はどんな術を施されても魔族になど…」
「フッフッ… 恐れることはない。
  これからは我が手足となり働けるようにしてやろうと言うのだ」
「いや! 絶対に耐え抜いてみせる そしてお前を!!」

『Демон нЖЮБЮСёбЩЭ Чжнювюс』

ファウストが怪しいげな呪文を唱えると白い魔方陣が緑色に輝いた。

「神魔反転術 この陣を完成させるためには…」

何も無い闇の中から黒いローブを纏った人影が6つ現れると
六芒の魔方陣の頂点に描かれた円の中に留まった。

「神に仕えていた女たちの汚された血が必要です」

魔物が人影が纏っていたローブを脱がせると
魔方陣と同じペンダントと黒い貞操帯を着けられた
虚ろな眼をした女たちがいやらしく腰をくねらせて
溢れ出した秘蜜を滴らせていた。

「あ、あなはシスターマリア… それにこのひとたちはあの教会の… !!」

黒いローブを脱がされて顔を見せた女たちは
マヤたちがアビゴールの魔城に攻め込む数日前に
世話になった教会のシスターたちだった。
シスターたちは虚ろな眼でマヤをみつめ淫靡に微笑んでいる。
そして最後にローブを脱がされ露になった女の顔をみた
マヤの全身が凍りついた。

「ア、アルジュナさん… どうしたのアルジュナさん!
  アルジュナさん!! アルジュナ!!」

白銀の騎士の仲間、アルジュナがシスターたちと同じ姿
同じ顔をしてマヤをみつめていた。

「アルジュナ!! 私よ、マヤよ、アルジュナ!!」
「呼んでも無駄ですよ。
 この女たちには魔道具『淫魔のめざめ』を装着してありますから」
「魔道具『淫魔のめざめ』…」
「そうです。この魔道具は人間の女を淫魔に変えるための物…
  そして魔道具に処女を奪われ、そのときに流れる汚れた血
   特に神に仕える者たちの汚された血こそが
    貴女を上級の魔女に反転させる重要な鍵になるのです」
「私を魔女に…」
「そうだ お前は魔女となり私に仕えるのだ。
  この儀式が終わる頃には
   この女たちもお前の忠実な部下になっているだろう」
「そんなことで…」
「クックック… ならば耐えてみせろ  ファウスト」

アビゴールは漆黒のマントを翻して
禍々しい細工が施された椅子に腰を下ろした。

「かしこまりました 『ДенЖЮБ ЧжёбЩЭ нювюсЮС』」
「ハウッ…!」

ファウストが呪文を唱えはじめると魔方陣から
放たれた黒い雷撃がマヤのレザースーツとチェーンメイルを
引き裂き、白い肢体が露になってゆく。
それと同時に6人の女たちが立っている円が黒く輝き
女たちが淫靡な声をあげ悶えはじめた。

「ハァァ…ウフフフ…」
「さあ女たちよ、魔にその身を捧げよ」
「ハァッ…ハァァァァ…」

魔道具に処女を奪われた女たちの背中が大きく反り返り
赤黒い血が内股を伝う。
恍惚の表情を浮かべている女たちが円の中で跪くと
黒い貞操帯は女たちの全身を包み込み黒い繭へと姿を変えた。
繭の表面からは絶え間なく赤黒い血が滲み出し
女たちの血を一滴残らず搾り取った。

『ЧжнДювюсенЖмонбЩЭЮБЮСё』

さらにファウストが呪文を唱えると女たちが流した血が
魔方陣を緑から赤に塗り替える。

「ウグゥ…グググゥ…」

対魔力の力を失い魔力を浄化出来なくなったマヤが
魔力に支配されまいと抗い、苦渋の声を漏らす。
だが魔方陣を伝いマヤの体に辿り着いた赤黒い血は
薄い皮膜のように拡がり、マヤの全てを包み込んだ。

しばらく皮膜の下で目を見開き、口をパクパクさせていたマヤも
意識を失ったのか瞼が閉じられ、ゆっくり胸を上下させている。
赤黒い皮膜はいつの間にか鮮やかな紅に染まり
妖しい輝きを放つ皮膜に胸の尖りや陰核がうっすらと浮かび上がっていた。


ほどなくするとマヤを覆っていた皮膜がズルズルと剥がれ落ち
血の気が失せた白い肢体が外気に触れてピクリと身震いした
マヤの瞼が開かれたが、半眼状態で夢とうつつの間を彷徨っている様子だった。

「アビゴール様 神魔反転術は成功したようです」
「なんだ… 呆気ないものだな」

髑髏のグラスを傾けながら儀式を眺めていたアビゴールは
マヤのあまりに呆気ない堕転に拍子抜けの様子だった。

「これだけの堕天の者の血で穢されれば
  白銀の騎士と言えども、正気を保つことはできません」
「もう少し、もがき苦しむ姿を楽しませて貰いたかったが…」

荒々しくマヤの胸を鷲づかみにして半開きの眼を覗き込むと
マヤは淫猥に微笑み、アビゴールにつかまれている反対の胸を弄り
もう一方の手を陰部にあてがい、指で陰核をなぞり、弄りまわした。
口元で舌を蠢かせて、半開きの眼でアビゴールをみつめる。

「もっとわたしを穢して…」

マヤは陰部を弄っていた手をアビゴールの手に重ね
両方の胸を激しく揉んで先端の尖りをさらに尖らせた。





「ンフ…ンフ… ンム…ムグゥ……」

マヤは鎧が外されたアビゴールの下半身に貪りつき
生殖器から迸る緑色の精液を全身で受け止めていた。

「ウフ…素敵な匂い… アビゴール様…
  次はわたくしの中にアビゴール様の魔を注ぎ込んで…」

マヤはアビゴールを跨ぎ、そそり立っている生殖器に
自身の性器を重ねゆっくりと腰を沈めた。

「ならぬ お前の処女を奪うは我にあらず」

アビゴールはマヤの腰を掴み、挿入半ばの生殖器を引き抜き
虚空に手を伸ばして黒い歪みを生み出すとそこから2本の棒状の
物体を取り出した。

「アァ…」

口惜しそうな表情と声を漏らしたマヤの目の前に
その物体を突き出した。

「魔族となり我に従うか」

陶酔しきった眼でアビゴールを見つめてマヤは小さく頷いた。

「はい お許し頂けるのでしたら
  アビゴール様の手足となり働く所存にございます」
「よかろう ならばこれを授ける」

アビゴールの手からマヤの手にその物体が手渡された。

「それは魔女サキュバスが魔角。 その魔角にお前の処女を捧げよ。
  どうすればいいかは… フフフ…理解しているようだな」

「クフゥ…ハアァァ…」

黒い魔角はマヤの舌先で舐められ、唾液で妖しく黒光りし
マヤはその魔角を陰核や秘所に擦りつけ熱い吐息を漏らしていた。

「マヤ それを咥えこめ。そして魔角に処女を捧げよ」
「は…はい、アビゴール様」

マヤは白い指で秘所を広げ、ゆっくりと魔角を挿入する。

「クフッ……熱い…」

クチュクチュと隠微な音をさせて魔角を出し入れさせる
マヤは魔族になる快感を楽しんでいるようだった。

「熱い…焼けそうに熱い… けど… とっても気持ちいい…ンフ…」
「ククク… 魔族になれば、その悦びは永遠のものとなる…
  さあ、魔角を呑み込み人を棄てよ」
「ふ…ふぁい…アビゴールさまァ……」

挿入していた魔角をマヤは一気に押し込んだ。
魔角の尻を指で押し、しっかりと奥まで挿入する
マヤの指を伝って深紅の血が垂れ落ちた。

「クワァァァ…アァ… アァァァァ…」

カクカクと全身を痙攣させるマヤの陰部から
黒い粘液が溢れ出し腰から下を漆黒に染めてゆく。

「どうした もう一本残っているぞ」
「お…おねがい…します……アビゴール…さまの……手で…いれて…」

四つん這いになりアビゴールにお尻を向けて懇願するマヤ。

「私に手伝いをさせるとは…」

邪悪な笑みを浮かべながら、マヤが握りしめている
魔角を奪い取ると、黒い粘液を溢れさせている淫唇に
遠慮なく魔角を挿入した。

「ハゥウン…… ぁ…あ…ありがとう…ござい…ます」

背中を反らせたマヤはこれ以上ない恍惚の笑みを浮かべると
その瞳に六芒の方陣が輝き、黒い粘液が完全にマヤを包み込むと
黒い卵状に姿を変えた。



ぬめるような輝きがあった卵の表面はすぐに乾燥し
幾つもの小さなひびが走り、ボロボロと殻が崩れ落ちると
膝を抱き抱えるように丸くなっているマヤが姿を現した。
その体はアビゴールと同じように青味をおび、手足の爪は黒く鋭利に伸びて
黒く染まった唇の隙間からは銀色に輝く牙が覗いていた。
そして陰部に挿入した魔角と同じ角が2本、額の左右から生えていた。

「フフフ… 目覚めよ、我が忠実なるシモベ サキュバス」
「…うっ……うぅぅん…」

アビゴールの言葉に小さく伸びをしたマヤだった者が上体を起こして眼を開く。
その眼は魔族特有の黒い眼に金色の縦長の瞳が輝いていた。

「アビゴール様…
  魔女サキュバス、アビゴール様に永遠の忠節をお誓い致します」

立ち上がり恭しく頭を下げるサキュバスの体は
マヤだったときよりも妖艶な体つきになっていた。

「忠節の証しとして、わたくしの可愛いシモベたちと
  人間どもの砦を落と… ウフフフ…人間どもをわたくしたちの虜とし
   魔族の奴隷として、アビゴール様の配下に…」

マヤが方陣の周りにある黒い繭の一つに触れて
黒い魔力を注ぎ込むと繭はガタガタと動き出して勢いよく二つに裂けた。

『ギギィー』

人の物とは思えない声を発して
繭の中から蝙蝠のような黒い羽を背中に広げた
青い肌に紅い眼、尖った耳と先端が槍のようになった黒い尻尾
肘と膝までの黒い手袋とブーツを着けたような手足をした
胸も陰部もさらけ出した魔物が現れた。
元々はマヤを魔女にするために儀式で魔道具に処女を捧げた一人
その顔にはマリアと呼ばれたシスターの面影が残っていた。
マヤは次々と繭に魔力を注ぎ込み、生贄にされた女たちを覚醒させる。
一体、また一体と同じ姿をした魔物が覚醒してゆく。
そのうちの一体はマヤと共に白銀の騎士として戦ってきた
アルジュナの面影を残していた。

覚醒した魔物たちは飛翔して
サキュバスの少し後ろに整列すると大人しく跪いた。

「おもしろい… が、ならば人間どもをけしかけている
  司祭たちを懐柔し、人間同士を争わせるのだ」
「ウフッ…ウフフフ…素敵… さすがはアビゴール様…
  かしこまりました。 我がシモベ、この淫魔たちと
   まずは西の砦の司祭を魔族の尖兵にして参ります」

サキュバスが黒い魔力を身に纏うと
腕と足が漆黒の輝き放つグローブとブーツで覆われ
全身は体が透けて見える闇色のローブで包まれた。

「では早速」
「待て、サキュバス
  魔女となったお前には必要のない物だが、これをお前に授ける」

アビゴールが拳を作り魔力を集めると
マヤから奪い返した銀の剣が現れ、アビゴールが柄を握ると
刀身に施された十字架の彫刻がボロボロと剥がれ落ち
銀色に輝いている刀身が漆黒に塗り替えられていった。
そして十字架の彫刻が施されていた位置に紅い眼が現れた。

「魔剣エクスカリバー…
  わたくしなどが頂いても宜しいのですか」

サキュバスはアビゴールの前に歩み寄ると
片膝をついて跪き、両手でエクスカリバーを受け取ると
生まれ変わった愛剣の刃の輝きをうっとりとみつめた。

「ありがとうございます。アビゴール様
  この剣をアビゴール様と思い、肌身離さず…」
「期待しているぞ サキュバス」

サキュバスがアビゴールの手に忠節の口付けをすると
剣は紅い石の指輪に姿を変え、サキュバスの指に収まった。

「アビゴール様のご期待に添える働きをお約束致します」

妖艶に微笑みながら闇に溶け込んでゆく
サキュバスをアビゴールはほくそ笑み見送った。



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