闇への転換 1


世界征服を企む謎の生命体ビースト。
ビーストは悪魔の細胞ビーストセルで人間を醜悪な怪人ビーストアニマルに改造し
世界征服の手駒として利用していた。
ビーストアニマルにされた人間は脳が退化し思考力を失う。
そのため、彼らを意のままに操るトレーナーとペアになり活動していた。
だが、秘密戦隊ジャスティーフォースの活躍でビーストの野望は阻まれ続けていた。




〜 夕暮れ スクラップ工場 〜

「待ちなさいビースト!!」
「グルルル… キー!!」
「ビーストアニマルじゃ話にならない。
  トレーナーはどこ!! 居るんでしょう、出て来なさい!!」

コウモリに似たビーストアニマルに向かいながら
ジャスティーツーはビーストアニマルを操っているトレーナーの気配を探った。

「ったく、五月蝿いヤツだね」

青緑の肌に黒いメイク、黒光りしたボディースーツ、グローブ、ブーツを着けた女性の姿をした
ビーストが両手で掴んだムチを鳴らしながらビーストアニマルの背後から姿をあらわす。

「あなたはビーストレーンΒ!!  よくも罪のない子供を…
   これ以上、あなたの思いどおりにはならないわよ!!」

工場の二階から見下ろしているビーストレーンΒにジャスティーツーは
腰のホルスターから抜いレーザーガンの銃口を向けた。

「フン! 自分の立場を理解していないようだね。
  このガキがどうなってもいいのかい  バットビースト!!」

声を荒げたビーストレーンΒが手に持っていたムチを地面に叩きつけると
ビーストアニマルは大きく開いた口に捕らえている子供の頭を近づけた。

「な、なにをするの やめなさい!!」

銃口をバットビーストに向け直したジャスティーツーの指がトリガーにかかる。
その様子をみていたビーストレーンΒがニヤリと微笑み。

「おや? 撃つのかい?
  面白い、やってご覧よ  でも一撃で仕留めないとガキはコイツの胃袋の中だよ」
「クッ… 卑怯な…」

苦渋の声を漏らしたジャスティーツーはトリガーから指を外し
構えていたレーザーガンをホルスターに収めた。

「フン… 大人しくする気になったのかい。
  ついでにその物騒なスーツ、武装を解除して変身リングも捨ててもらおうかね ジャスティーツー」
「………」
「フフフフ… このガキがどうなってもいいのかい  柊サツキ先生」
「!!! ど、どうして私の名前を」
「フッフッフッ…ハッハハハハハ… ずっと正体を隠し通せると思っていたのかい
  笑わせるんじゃないよ。  なかよし保育園では随分人気があるみたいだねぇ ジャスティーツー」
「まさか、最初から私を…」
「クククク… 今頃気付くなんて バカな奴だよ。  おまけに仲間に連絡してないようだね」

自分の軽率な行動を後悔し握り締められたグローブをはめた手が小さく振るえる。

「武装解除しないのかい、あたしは構わないよ   バットビースト!」
「グヒヒヒヒ… グルルルル… ギシャァァァ…」

バットビーストの涎が滴る牙が子供の頭にゆっくりと近づく

「待って!!」
「ったく、手間をかけさせるんじゃないよ」

ジャスティーツーの体が眩い輝きに包まれ、ネイビーブルーのジャスティースーツが解除され
Tシャツにジーンズ、髪の毛を後ろで束ねた柊サツキの姿に戻った。
目の前で不敵な笑みを浮かべ立っているビーストレーンΒをサツキは睨むことしか出来ない。

「武装を解除したわ その子を解放して」
「何言ってんだい まだリングが残ってるよ。
   待ちな!! 余計なマネはするんじゃないよ」
「クッ…」

腕時計にカムフラージュされた変身リング。
そこに内蔵された通信機を作動させて仲間にこの状況を伝えようとした
サツキの行動を察知したビーストレーンΒの言葉が彼女の企てを抑制した。
サツキは素直にリングを外して数メートル先の地面に投げて両手を上に上げる。

「これでいいかしら  早く子供を解放して」
「そうだね!!」
「何を! エッ」

ビーストレーンΒの振り出したムチがサツキの首に巻きつき
それと同時にサツキが全身を激しく痙攣させる。

「ヒギィィィィィィィィィ………」

電磁ムチの強力な電気ショックがサツキの意識を奪い
地面にうつ伏せになり白目を剥いてビクビクと痙攣しているサツキを足で
仰向けに転がしたビーストレーンΒは淫靡に微笑んだ。

「バットビースト こいつを連れて帰るよ」
「キィ…」
「ガキは…  フフフ… ガキはご褒美だよ」
「グヒャァァァ」


数時間後、外された変身リングから緊急信号が自動発信され
駆けつけたジャスティーフォースたちにジャスティーツーの変身リングと大量の血痕が発見された。





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