闇への転換 4


〜 謎の生命体ビースト  ビーストレーンの館 〜


サツキが意識を取り戻したのは丸一日たってからだった。

「ア… ウゥゥン…… 私は…  あれ…拘束が解かれてる…」

何気に腕を動かしたサツキは自分の拘束が解かれていることを悟る。

「気がついのね、新しい体はどう?」

Αの声で飛び起きたサツキは自分の体が青くなっていることに気がついた。

「これは…」
「そのスーツで改造の仕上げをしているところよ。
  貴女に着せたときは半透明だったけど綺麗に染まったでしょう。 それは改造が順調に進んでいる証」
「ウ、ウソよ…どこも変わってないじゃない…」
「クス… 証拠を見せてあげる」

ベッドの上に座ったまま逃げようとしないサツキのスーツの裂け目から陰裂に指を挿し込みクチュクチュと弄くり
サツキが体を振るわせるのと同時に指をゆっくり引き抜いた。

「クスクス… ほら まだ小さいけど貴女もトレーンセルを生み出せるようになってるでしょう」

Αが陰部から取り出してサツキの陰裂に入れた卵よりかなり小さめだったが
同じ黄緑色をした卵を親指と人差し指で抓んでいた。

「ち、ちがう… だまされない… 私は…」
「クスクス… 貴女の体は私と同じになったのよ」
「うるさい! 私はビーストと戦うジャスティーフォース… 私はジャスティーツーよ!!」

言葉だけで逃げようとも、戦おうともしないサツキをみてΑが笑みを浮かべる。

「クス… これからその邪魔な意志を取り除いてあげる」
「ふざけないで!!  か、体をビーストにされたからって、心まであなたたちの… な、なによ…」

サツキの顔にΑが手を伸ばし両手で頬を押さえ、じっとサツキの瞳をみつめると
Αの紅い瞳をサツキは睨み返していた。

「クスクス… 言ったでしょう 身も心もビーストとして働けるようにしてあげるって…」
「な、何をされても絶対負けない… 心まで悪魔にされてたまるものですか…」

変わらず言葉だけで抗うサツキにΑが妖しく微笑み、彼女の頬を押さえていた手を首にずらす。
そして、サツキの首の後ろにあるスーツのだぶつきに指を掛けてひっぱりあげると
後頭部からサツキの頭をすっぽりと青いスーツのだぶつきで覆ってしまった。
顔の半分、口元だけがオープンになった青い光沢のあるゼンタイスーツでサツキの体は覆われていた。
目の前が真っ青になり、慌てたサツキは顔に被されたスーツを剥ぎ取ろうとする。
だが、スーツはぴたりと肌にはりつき生き物のように覆った部分をジワジワと締め付けた。

「何するのよ… ぬ、ぬげない… エッ…  なに… 何かが私に…
  ちがう! 私はビーストなんかじゃない! うるさい!! 私の中に入ってこないで!」
「クスクス… スーツの内側に塗りつけておいたビーストセルの融合がはじまったわ。
  トレーンセルの融合が完了した貴女の体にビーストセルが融合しても醜い姿になることも脳が退化することもない。
   貴女の中に新しい心とビーストアニマルやトレーナーを意のままに操る力を与えてくるの…」
「私はジャスティーフォース! ビーストと戦うジャスティーツーよ!! …ビースト…ジャスティート…タタカウ…
  違う!! 私はジャスティー!! …ワタシハ…ビースト……
   違う違う!! 私はジャスティー、ビーストは…… …チュウセイヲチカイ…ツカエル…
    やめろ! 私はジャスティーツー…… ビーストトシテ…タタカウ… ジャスティーハ…テキ…
     ちがう… ジャスティー… ビーストじゃない… ワタシハ…ビースト…ジャスティージャナイ…
      …私は…わたしは…チガウ……ワタシハ…ワタシハ…ワタシハ…」

青いゼンタイで覆われた頭をかきむしり、頭の中に響く声に抗っていたサツキに変化があらわれた。
肌の色に変化はなかったが、サツキの口角が微かにつりあがると唇がスーツと同じ青に染まり
ゼンタイスーツがボディースーツとグローブ、ブーツへと変わると
露になった顔にも青いメイクが施され、サツキはΑと色違いの姿に変容していた。

「私はビースト… ビーストが統べる世界にすることが私の使命…」

輝きのない濁った瞳でΑを見やりその言葉を口にするサツキ。

「クス… どう? 心の改造も無事に終わったみたいよ」

頃合をみて部屋に戻ってきたΒとΓにΑは自慢げに微笑んだ。

「ようやく成功したな Α」
「キャハ…キャハハハハ… 新しい仲間だ〜」
「クス… 大きな戦力を得たわ」
「そうだな、あたしたちトレーンならアニマルの力を最大限発揮させることができるからな。
  トレーンにできなかった心が壊れた女たちをビーストを操るトレーナーに改造しても
   所詮はアニマルと同じ知能を持たない人形が人形を操るんだ、ジャスティーフォースに勝てる訳がない」
「クスクス… それもそうね」

新しい仲間の誕生に三人は満足の笑みを浮かべ、虚ろな瞳をして動かないサツキを囲んでいた。




〜 謎の生命体ビースト  ビーストの間 〜


青緑の肌に赤黒白のスーツを纏ったビーストレーンΑ、Β、Γに囲まれるように
まだ人間としての肌の色を残したサツキが色違いのコスチュームを纏いビーストの間へと続く通路を歩いていた。

「我らがあるじビースト様よ」

生物の体内を思わせる紅い部屋の中心で宙に浮いている濃青緑をした球体を指しながら
ビーストレーンΑがサツキの背中を軽く押し、ビーストの前に進むよう促す。
輝きのない濁った瞳でΑをみやり小さく頷いたサツキがゆっくりと球体の前に進み
恭しく頭を下げそのまま片膝をおり跪いた。

コポコポコポ…

「ハイ ビースト様」

球体の中に気泡が生まれると感情のないサツキの声が響く。
ビーストセルが融合した脳に直接語りかけてくるビーストの問いかけに
サツキは従順に答えを返していた。



ゴポッ…

しばらく言葉を交わしていると球体の一部が分離し、小さな珠となりサツキの顔の前で静止した。

「ハイ 偉大なるビースト様に永遠の忠節を誓います」

顔を上げたサツキが口を開き、ゆっくりと近づいてくるビーストの体の一部を受け入れると
サツキの皮膚に濃青緑の血管が全身に浮かびあがり、サツキの皮膚がΑたちと同じ青緑へと変色しはじめた。

コポコポ…コポ…

「ハイ ありがとうございます。  私はビーストレーン…  ビーストレーンΔ
  ビースト様の手となり足となり働くシモベ。 何なりとお申し付け下さいませ」

小さく頭を垂れたサツキが再び顔を上げるとその瞳は深紅に輝いていた。




〜 謎の生命体ビースト  ビーストレーンの館 〜


ビーストレーンの館。
巨大な水晶球が設置された部屋にビーストレーンΑ、Β、Γ、そして、ビーストレーンΔとなった
柊サツキが水晶を囲むように設けられたソファーに腰掛けていた。

「ウフフフ… ジャスティーフォースの連中は血眼になって私を探している……バカね
  自分たちも私と同じ捨て駒にすぎないってのに…」

ビーストレーンΔは水晶球に映る元の仲間と自分が使っていた変身リングを装着した
見覚えのない女の姿を憎しみに満ちた眼でみつめていた。

「クスクス… 柊サツキが行方不明になって2週間。
  新しいジャスティーツーが補充され、すっかりうちとけているわね」
「キャハハハハ… Δ 見捨てられたんだ〜 キャハ…キャハハハハ…」
「その柊サツキはすっかりあたしたちビーストの仲間… だがな」
「ウフフフ… そうね。 でも、面白くないわ… ウフッ…ウフフフ…」

Δは水晶球の中の女を見つめながら邪悪に微笑んだ。

「あのさ〜 Δのご挨拶も兼ねて、お久しぶりにみんなで挨拶しに行こうよ〜
  このあいだ手に入れたアニマル使ってみたいしさ〜 キャハハハハ…」
「そうだな Δの姿をみてヤツらがどんな反応を見せるか楽しみだ」
「ウフフフ… ちょっといいかしら」

小躍りして喜ぶΓをみながら呟くように言葉を発したΔを三人がみやる。

「キャハ…? なになに〜 Δ どうかしたの〜」
「ウフフフ…」
「何を考えてるんだ Δ  もったいぶらずに言いなよ」
「ウフフフ… ジャスティーフォースの前で私をトレーナーにしてくれない?」
「キャハハハ… 何言っての〜 Δはトレーンだよ〜 どうしてトレーナーなんかに〜」
「クスクス…」
「フッ… ハッハハハハ…」
「キャハ? なによ〜」
「どうせ、ジャスティーフォースにもどれ… って言うつもりだったんでしょう?」
「クスクス… 貴女から言い出してくれるとは思わなかったわ」
「なら すぐに始めようじゃないか」
「キャハ? 何だかわかんないけど、あたしもやるやる〜」
「ウフフフ…」

こうしてビーストが企てるジャスティーフォース壊滅作戦が実行された。



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