つばき


邪魔大王国。

「壱鬼馬(イキマ)よ その二人 邪魔大王国の奴隷としジーグと戦わせるのじゃ」

ハニワ幻神に苦戦する鋼鉄神ジーグを援護した美角鏡、珠城つばきが操るビッグシューターは
撃墜され邪魔大王国に捕えられてしまった。

「誰がお前たちの奴隷なんかに!!」
「生意気な小娘 お前から先に奴隷にしてくれるわ」
「似ている… あの忌々しい司馬宙と共に我を封印した女に」
「エッ? それって… 如月美和は私のおばあちゃんなんだから似てて当然よ!」
「黙れ!! 小娘が妃魅禍(ヒミカ)様に無礼な 二度とそのような口が聞けぬようにしてくれる」

壱鬼馬が人間を邪魔大王国の奴隷にするための人型の埴輪に珠城つばきを押し込もうとしていると

「待つのじゃ 壱鬼馬」

つばきを睨んでいた妃魅禍が妖しく微笑み

「あの卯月美和の血筋の者か これは面白い」
「な、なによ」

言い知れぬ恐怖と不安につばきの声と体が震え
それを見た妃魅禍の微笑みに妖しさが増し、その眼が紅く妖しく輝く。

「えっ…あ…ああ…」

怯えた眼で妃魅禍を見ていたつばきの瞳が紅く染まる。

「クククク… 今よりお前はわらわの娘として生まれ変わるのじゃ」
「あ…ああ…わたしは…」
「つばき!! 妃魅禍の眼を見るんじゃない」
「黙れ! 妃魅禍様の邪魔をするな!! お前も邪魔大王国の奴隷に生まれ変わるがいい」

壱鬼馬はつばきを入れようとしていた人型の埴輪に美角鏡を押し込んだ。

「お前は姫魅禍(キミカ) わらわの娘」
「…ちがう… わたしは…珠城…つばき……」

つばきは首を振り妃魅禍の言葉を拒絶する。
が、妃魅禍の眼の輝きが増し抵抗するつばきの心をねじ伏せる。

「私は姫魅禍…邪魔大王国…女王妃魅禍の…娘…」

抵抗の気配がなくなったつばきの衣服を妃魅禍の鋭い爪が引き裂くと
何処からともなく現れた漆黒のオロチがつばきの体に巻きつき
二の腕と太ももの中ほどまでを覆う黒のフィンガーレスグローブとブーツ
陰部をギリギリ隠す程度のショーツ、胸を保護するビスチェ様のアーマーに変わり
大きく口を開いたオロチの顔がつばきの頭を覆う兜になった。

邪悪な力に包まれ苦悶に顔を歪めるつばきの顎に指をかけた
妃魅禍は口移しに呪術の力を吹き込む。
青白い球体がつばきの口から体内に入ると苦悶の表情は恍惚へと
皮膚の色が妃魅禍のそれと同じになり黒く染まった爪が鋭く尖り
目元と口元が邪悪なメイクで飾られた。

「愛しい娘、姫魅禍よ 我らの敵は何じゃ」
「…はい、お母様 我らの敵は人間 そして最大の敵は鋼鉄神ジーグです」

妃魅禍と同じ紅い眼に金色のオロチの瞳を見開き姫魅禍となったつばきが答えた。




「愚かな人間どもよ 無駄に抗うことを止め、我が母 邪魔大王国女王妃魅禍の前に跪きなさい」

思いもしない光景にビルドベース全員の表情が凍りついた。

ビルドベースの前に現れた壱鬼馬に改造されたビッグシューター。
その機上に設けられた蛇や蜥蜴の彫刻が施された椅子に腰掛ける変わり果てた姿のつばき。
そして彼女を囲むように妃魅禍の忠臣壱鬼馬、壬魔使(ミマシ)、阿磨疎(アマソ)の三人が立っていた。

「姫魅禍様 これを」

壱鬼馬が妃魅禍から授かった御霊を姫魅禍に手渡し邪魔大王国の奴隷となった美角鏡を彼女の前に跪かせた。

「この奴隷は妃魅禍様に楯突いたヤツラの仲間 この奴隷に御霊を与え、ハニワ幻神の一部に致しましょう」
「ウフフフ… それは面白い考えね 壱鬼馬」

残忍な微笑を浮かべたつばきが青白い炎の塊『御霊』を掴んだ右手を美角鏡の胸に沈めた。


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